世界のすごい教会・修道院総特集

 

世界には、教会・大聖堂・礼拝堂・修道院などキリスト教系の様々な建物があります。こちらのページでは、まず教会や修道院の基本についてご紹介します。個別のご紹介については「世界のすごい教会・修道院総特集②」をご覧ください。合計153ヶ所取り上げていて、全てガイド記事があるので興味のある場所は合わせてご覧いただけます(^^)

 

また、モスクについては「世界のすごいモスク総特集」をご覧ください。

 

 

世界のすごい教会・修道院総特集①「教会と修道院の基礎知識」:目次

グーグルマップを多用しているので通信環境の良い状態でご覧ください。マップの画面が黒くなっていたり、前後の文脈と合ってないなと感じたときは、ページを更新してみてくださいm(_ _)m

 

 

「教会」とは?

サグラダ・ファミリア(スペイン)
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海外に行くと大都市から小さな村までどこでも見ることが出来る建物に「教会」があります。宗派・建築様式・建造時期・規模などによって呼び名やデザインが変わり、非常に奥深いのが魅力です(*´∀`*)

 

ギリシャ語で「人々の集い」を意味する「エクレシア」が語源で、スペイン語では今でも「イグレシア(Iglesia)」と呼ばれています。つまり、本来は「共通の信仰を持つ人々が集まる建物や場所」を「教会」と呼んでいたのですが、現在においては「キリスト教系の信仰の場」を教会と呼ぶのが一般的です。そして、規模によって大きく3つの呼び名があります。

 

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英語で言う「チャペル(Chapel)」。規模が小さく、王宮の中に併設されていたり、湖の横にちょこんと建っていたりします。写真はイタリア「オルチア渓谷」の名所「ヴィタレータ礼拝堂」です。

 

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英語で言う「チャーチ(Church)」。普通の街中にあるような中規模のものを指し、一般に「教会」という言葉があてられています。写真はポーランドの「聖マリア教会」で、内部の美しさが有名です。

 

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カトリック教会では「カテドラル(cathedral)」と呼ばれ、周辺の中小規模の教会を取りまとめる役割があります。カトリック教会から赴任する司教が座る椅子「司教座」が設置されているのが基本です。写真はスペインの「セゴビア大聖堂」で「大聖堂の貴婦人」と称される美しい外観をしています(,,゚Д゚)

 

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これに対し「正教会(=東方教会・ギリシャ正教)」や「プロテスタント」ではカテドラルとは呼ばれません。正教会では司教にあたる立場を「主教」と呼びますが、主教座の有無に関係なく「大規模な教会」が「大聖堂」と呼ばれています。

 

プロテスタントに至っては基本的に主教制度がありません。そのため、やはり大規模な教会が大聖堂と呼ばれています。写真はロシアのサンクトペテルブルクにある「トロイツキー大聖堂」で世界最大級の木造教会です。

 

建築様式の違いを知る

■1855年のケルン大聖堂(ドイツ)
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教会を語る上で欠かせないのが建築様式です。有名なところでは「ロマネスク様式」「ゴシック様式」「ルネサンス様式」「バロック様式」などがあり、それぞれ「初期~」「盛期~」など細かく分かれるので正確には専門家でないと分からない奥深い領域です(^^;)

 

また、ヨーロッパの大聖堂は数百年かけて建設されているものも多いため、様々な様式が織り混ざっているのも一般的です。上記の4様式については、ざっくりとですが次のような特徴があります。

 

■ピサ大聖堂(イタリア)
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10世紀末から13世紀初頭まで栄えた様式で、分かりやすい特徴には「分厚い壁」と「多くの小さな窓」が挙げられます。代表的な建築物は、斜塔で有名な「ピサ大聖堂(イタリア)」や、カール大帝が命じて造らせた「アーヘン大聖堂(ドイツ)」など。こちらはピサ大聖堂の内部です。画面をグルッと回して周囲を見てみてください(^^)

 

 

正面に写っているのは「ガリレオのランプ」と呼ばれるブロンズ製のランプです。詳細は「ピサの斜塔:徹底ガイド」をご覧ください。

 

■シャルトル大聖堂(フランス)
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ロマネスク様式と入れ替わるように12世紀後半のフランスで誕生した様式です。ロマネスク様式に比べると、建物や鐘楼の高さが高くなり、壁が薄くなります。そして最大の特徴が巨大な窓とステンドグラスです。

 

■シャルトル大聖堂の内部

 

圧巻の美しさですね(,,゚Д゚) ステンドグラスは、元々は「字が読めない一般大衆でも聖書の内容を理解できるように」という目的で造られていて、特に「シャルトル大聖堂」のステンドグラスは「ヨーロッパで最も美しい」と称されています。

 

この巨大なステンドグラスによって、ロマネスク様式よりも圧倒的に内部が明るくなりました。また、画面を上に向けて天井を見ていただくと、バツ(×)が連なっていますよね。「交差リブヴォールト」といって、これもゴシック様式の大きな特徴です。

 

■サント・シャペル(フランス)の内部

 

当時、ヨーロッパでは農地開墾の推進や農業技術の向上から食糧事情が大幅に向上していました。これにより人口が増大し大都市の発達につながり、都市部の人々の心の支えとして巨大な教会が造られるようになったんです。代表的な建築物は「ケルン大聖堂(ドイツ)」「ノートルダム大聖堂(パリ)「サント・シャペル(パリ)」「ウェストミンスター寺院(イギリス)」「ミランのドゥオーモ(イタリア)」など。

 

■フィレンツェのドゥオーモ(イタリア)
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15世紀から17世紀まで栄えた様式で、フィレンツェから起こったルネサンス(文芸復興)の影響を大きく受けています。ゴシック様式やロマネスク様式よりも後の様式ですが、ルネサンス自体が「古代のギリシャやローマの学問や芸術を見直す風潮」なので、実は非常に古い様式がベースになっています。

 

 

こちらはフィレンツェのドゥオーモの内部です。天井のクーポラ(ドーム)がルネサンス様式の大きな特徴で、ここにはイタリアの至宝「最後の審判」のフレスコ画があります。画面をグーッとアップにして見てみてください(^^)

 

ルネサンス様式は「美の追求」と「調和」が重視されていて、シンメトリー構造や水平線などが取り入れられています。日本人にとっては「ルネサンス=華やか・豪華」というイメージがあるかと思いますが、実はそれは後述するバロック様式の特徴で、ルネサンス様式は比較的落ち着いたつくりになっています。

 

■サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会
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やはりイタリアに多く、ヴェネツィアの「サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会」なども有名です。この教会は鐘楼の上からヴェネツィアの絶景を一望できます(*´∀`*)

 

 

■サン・ピエトロ大聖堂(バチカン市国)
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バロック様式は16世紀末から発展した様式です。イタリア・ローマの中にあるバチカン市国の象徴「サン・ピエトロ大聖堂」は「バロック・ルネッサンス様式」の代表的建築物であり、その荘厳なつくりは見るものを圧倒します(,,゚Д゚)

 

■サン・ピエトロ大聖堂の内部

 

背景には「宗教改革で減少した信者を再び獲得していく」という目的がありました。そのため、とにかく「豪華絢爛」なつくりになっていて、絵画や彫刻がダイナミックに装飾されていたりします。また、この時代にはバロック音楽も発達しオルガンが全盛期を迎えたため、超巨大なパイプオルガンが設置されるようになりました。

 

■ペーター教会(オーストリア)

 

こちらの「ペーター教会」ではパイプオルガンのコンサートを無料で見学することができます(^^) 動画を再生していただくと最初から演奏が流れます。内部もゴテゴテしくて「ザ・バロック様式」という感じです。

 

ちなみに、教会以外の有名な建築物ではフランスの「ヴェルサイユ宮殿」やイタリアの「トレヴィの泉」が挙げられます。

 

■トレヴィの泉

 

■ヴィースの巡礼教会

 

建築様式は他にも無数にあります。こちらはドイツにある「ヴィースの巡礼教会」で、建築様式はバロック様式の流れを汲む「ロココ様式」。天井のフレスコ画は「天から降ってきた宝石」と讃えられています(,,゚Д゚)

 

■ハットルグリムス教会
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こちらはアイスランドの首都・レイキャビクにあります。「表現主義建築」という様式だそうで、オーロラのもとへ飛んでいくロケットのような外観が印象的です。詳細は「レイキャビク②オーロラ」をご覧ください。最近になって建てられた教会の中には、このような独特なデザインのものが多数あります。

 

■アルマス聖堂
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「建築様式」とは少し違うと思いますが、ポルトガルのポルトには世界屈指のインスタ映え教会が並んでいます。名産品である「アズレージョ」というブルータイルで装飾されていて、他では見られない外観になっています。詳細は「ポルト③6つの教会」をご覧ください。

 

 

正教会の教会は全く違う

正教会とは?
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キリスト教の3宗派をざっくりと色分けしてみました。中学校の社会科を思い出しますね(^^;) 赤がカトリック教会、青がプロテスタント、緑が正教会(=東方正教会/ギリシャ正教)です。細かい区分は専門家の領域になるので、我々一般人としては、ヨーロッパの南側がカトリック、北側がプロテスタント、東側が正教会という認識で十分かと思います。

 

■歴史の流れ
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photo by:Kinno Angel ※拡大できます

 

少しだけ歴史的な部分に触れると、キリスト教というのは4世紀頃に5つの大きなエリア(総主教区)に分かれていました。

・ローマ(現イタリア)
・コンスタンティノープル(現トルコ)
・アンティオキア(現シリア)
・アレクサンドリア(現エジプト)
・エルサレム(現イスラエル)

 

そして、まず8世紀から12世紀頃までの間にローマ(西方教会)と残りの4つ(東方正教会)に分かれていきます。さらに、上記の宗教改革によって主に北部の人々が西方教会を離脱しプロテスタントを結成。残った人々が今のローマ・カトリック教会につながっています。

 

■アヤソフィア大聖堂(トルコ)
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「正教」がつくものには「ロシア正教」「ルーマニア正教」「セルビア正教」など様々ありますが、これらは基本的に「正教会の中の組織別の名前」であり、宗派としては「正教会」となるそうです。そして、その別名(または、ほぼ近い呼称)が「東方正教会」や「ギリシャ正教」とのことなんですね。

 

■ゲガルド修道院(アルメニア)
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ただ、「ゲガルド修道院」などで知られる「アルメニア正教会」や、「ラリベラの岩窟教会群」で知られる「エチオピア正教会」など、中東やアフリカの正教会になると話が変わってくるそうです。複雑ですね(^^;)

 

■血の上の救世主教会(ロシア)

 

正教会の教会はカトリックやプロテスタントの教会とは一線を画します。外観もそれぞれ特徴がありますが、特筆すべきは内部です。全面にビッシリと「イコン(聖人画)」が描かれていて、ちょっと恐い感じすらあります(,,゚Д゚)

 

■ヴァーンク教会(イラン)

 

イランはイスラム教のイメージですが、上記のアルメニア正教会も存在しています。こちらも天井までビッシリと埋め尽くされていて圧巻の一言です。このように、正教会の教会は規模の大小に関わらず基本的にイコンが並んでいます。

 

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こちらはテトリスに登場することで有名な、モスクワの「聖ワシリイ大聖堂」。モスクワのみならずロシアの象徴です。この玉ねぎドームがロシア正教の特徴で、サンクトペテルブルクヤロスラブリセルギエフ・ポサドなどロシア各地で見ることができます。

 

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特に、巨大な木造教会として有名なキジ島の「プレオブラジェンスカヤ教会」は、ロシア最多となる22個もの玉ねぎドームが付いていますΣ(゚∀゚ノ)ノ

 

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photo by:Elke Wetzig

 

ウクライナとポーランドの国境付近には、まるでおとぎ話に登場しそうな木造教会が無数にあります。多くが東方正教会の建物で、中でも立派な16の木造教会が「カルパティア地方の木造教会群」として世界遺産に登録されています。中に入ったら魔法使いが出てきそうですね(*´∀`*) 木造なので独特な雰囲気がありますが、やはりイコンがたくさん並んでいて迫力があります。

 

 

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ルーマニア北部のスチャバ県に点在する8つのルーマニア正教会を指します。モルドヴァ公国の歴代の領主たちが、オスマン帝国との戦いに勝利するたびに記念として建造しました。1993年に7つの教会が世界遺産に登録され、2010年に1つ追加されています。

 

 

これらの教会は世界の他の教会とは全く異なり、外壁がフレスコ画で埋め尽くされています(,,゚Д゚) 描かれているのは同じくイコン。青を基調にした色使いが印象的です。詳細は「モルドヴィア地方の教会群:徹底ガイド」をご覧ください。

 

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エチオピアのラリベラには巨大な岩をくり抜いて造られた驚くべき教会が並んでいます。これらはエチオピア正教会の教会で「第2のエルサレム」を目指して建設されました。現在でもクリスマスには数万人が訪れるそうですΣ(゚∀゚ノ)ノ

 

 

内部もしっかりと造られています。詳細は「ラリベラ:徹底ガイド」をご覧ください。

 

 

特殊な立地が魅力の教会

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世界には立地が特殊な教会も多数存在します。こちらはスペインの「サン・フアン・デ・ガステルガチェ教会」。2014年にはスペインの人々が選ぶ「自然が美しい観光名所」で第1位に輝いています。

 

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続いてはクロアチアの「クルカ国立公園」にある「ヴィソヴァツ修道院」。唖然とするほどの絶景ですよねΣ(゚∀゚ノ)ノ スロヴェニアの「ブレッド湖」の「聖マリア教会」などもそうですが、湖の中の小島に建てられた教会というのは非常にフォトジェニックです。

 

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丘の上に建てられた教会も多いです。こちらはコロンビアの「カルタヘナ」にある「ポパ教会」。周辺を一望できるため観光名所になっていますが、「丘の周辺」というのは世界共通で治安に不安があるので注意が必要です。

 

■ポパ教会からの景色

 

そして数少ないですが「地下」にも壮大な教会や礼拝堂が造られています。代表的なのがコロンビアの「塩の大聖堂」。地下220mのエルサレムです(,,゚Д゚)

 

■塩の大聖堂

 

 

修道院とは?

モン・サン・ミッシェル(フランス)
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ここまで見てきた教会は「特にキリスト教において、共通の信仰を持つ人々が集まる場所」でした。「一般の人々が集まり聖職者の仕切りのもと祈りを捧げる場所」と捉えると、日本で言う神社にあたりますね(^^) それに対し修道院は「キリスト教における戒律や規則に従い修道士や修道女が共同生活を行う場所」で、日本でいうと寺や尼寺にあたります。

 

ノヴォデヴィチ女子修道院(ロシア)
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教会が1つの建物なのに対し、修道院は複合施設といった感じで、大規模なものだと小さな村のようになっています。ただ、地方などに行くと教会が修道院の役割も果たしていて、呼称としては明確に区別されていなかったりします。

 

禁欲が前提になるので基本的に男女別であり、厳しい自然環境に建てられていることも多いです。代表的な場所だとギリシャの「メテオラ」が挙げられます。画面をグルッと回して周囲を見てみてください。

 

■メテオラのヴァルラアム修道院

 

絶景ですね(,,゚Д゚) 「僧院」と呼ばれる場所も基本的には同じで、トルコの「スメラ僧院」などが知られています。

 

■スメラ僧院(トルコ)
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これで基礎知識については終了です。次は当サイトで取り上げているスゴイ教会や修道院の中から、特にスゴイ155ヶ所をテーマ別にご紹介します。それでは「世界のすごい教会・修道院総特集②」をご覧ください(^^)

 

 

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